浜松ダヴィンチキッズプロジェクト
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Report-活動報告-

2015年07月08日 【基本概念習得プログラム】

基本概念習得プログラム①「物体の運動と数学」が開催されました

 6月27日(土)に、浜松トップガンプロジェクトと合同で、基本概念習得プログラム①「物体の運動と数学」が開催されました。
 今回は、「モーションエンコーダシステム」を利用して、斜面を運動する物体の位置・速度を測定し、そこから位置と速度の関係、そして力の概念・法則を学ぶというものです。講師は、静岡大学工学部の藤間先生(物理)が務めました。

モーションエンコーダシステム

 まず、藤間先生が「4つの力」、すなわち重力(万有引力)、電磁力(クーロン力)、強い力・弱い力(原子核内や素粒子に関わるもの)について説明されました。なかでも、私たちに最もなじみ深いのが重力で、地球が存在し、その上に私たちが立っていられるのも重力のおかげ。重さ(質量)のある物体の間には、必ず引き付けあう力(引力)が働きます。これを「万有引力」(重力)といいます。

ある物体の重さ(質量)=m(kg)、もうひとつの物体の重さ=M(kg)、
万有引力の大きさ=F(N)、G=万有引力定数

 地上では重力加速度約 9.8(m/s2)なので、自分の体重×9.8が自分に働いている地上での重力(N)になります。参加者たちは重力計に載り、自分にかかる重力を調べました。数値で確認できたことで、重力への理解が深まったようでした。


 
  次に、左図を使って「力のつり合い」について学びました。立っている人の重力が下向きに働いていますが、それと同じ大きさの力で床が人を上向きに支えています(抗力)。
 このような、複数の力が互いを打ち消し合っている状態を「力がつり合っている」といいます。

 物体が静止している場合(速度0)、その物体には力が働いていないか、つり合いの状態にあるといえます。ところが、床面が水平から斜めに傾いていくと、面が物体を支える力が変化し、力のつり合いが破れて、重力が斜面方向へ働くようになります。この力(斜面に平行な成分)が止まっている物体に動きを与えます。

 

 斜面に平行な成分(実際に働く力)の大きさは、斜面の三角形(黄色の部分)と重力の三角形(緑色の部分)が相似することから導き出せます。例えば、斜面の長さが100cm、斜面の高さが2.5cmだとしたら、斜面に平行な力は元の重力の1/40になります。物体を斜面上で滑らす力は、物体の重さ×0.24(N)になるのです(9.8×1/40)。

  

 続いて、「モーションエンコーダシステム」による実験を行いました。このシステムは、斜面に記された白黒の縞模様を、斜面を動くカートのセンサーで検知し、カートの位置と速度を測定するものです。
 参加者たちが、それぞれカートを走らせると、LabQuest2(記録装置)に、時間、位置、速度などのデータが表示されました。その数値を読み取って「位置」と「速度」の2種類のグラフを描く作業に取りかかりました。かなり難解でしたが、参加者同士で相談したり、藤間先生他から指導を受けるなどして、曲線グラフと直線グラフを完成させました。


  

 次の作業では、完成した「速度」のグラフ(直線グラフ)に、時間軸0.5秒毎の位置に縦直線を引き、底辺を0.5~2.5秒とする三角形の面積を求め、その値を「位置」グラフに×で記入しました。すると、ほぼ一致しました。三角形の面積は、細長い短冊の面積(距離=速度×時間)を足し合わせたものに相当するからです。「ある時間での位置=その時間までの速度の面積」の関係が成り立つことがわかりました。

 

 なお、積分ではこのように表されます。微分・積分といった数学は、ニュートンらによって物体の運動を表現するために生み出された「言葉」なのです。
 今回のデータを読み取ってグラフを描く作業は、特に小学生のキッズには難しかったようです。しかし、グラフが描けるようになるまで努力したことで、物体の運動と数学の深い関わりがつかめたのではないかと思います。

 浜松トップガンプロジェクトが発行した「トップガンジャーナル No.2」(7/22発行)に、この講座の模様が紹介されています。中学生記者によるレポートや参加者の感想、トップガン担当の先生による解説など、充実した読み物となっていますので、ぜひご覧ください。
→トップガンジャーナル No.2(ここをクリック)
2015年02月27日 【基本概念習得プログラム】

基本概念習得プログラム⑥「浜松中学校の生徒企画による小学生向け科学講座」&「平成26年度ダヴィンチキッズ成果発表会」が開催されました

 2月21日に、基本概念習得プログラム⑥「浜松中学校の生徒企画による小学生向け科学講座」が、浜松中学校で開催されました。浜松中学校のTop Gunメンバーが、附属小学校の児童(5,6年の希望者)を相手に、5班に分かれて実験を行い、その原理などについて説明しました。それぞれの実験についてご紹介します。

<第1理科室>
★炎色反応 ~いろいろな色の炎を観察しよう~
 「炎色反応」とは、金属を炎の中に入れて熱すると、それぞれの元素特有の光を発して燃えること。そのしくみや利用法、原子についてなどを説明した後に実験を行いました。

    
  
       

 白金(プラチナ)線に塩化ストロンチウム、塩化カリウム、硫酸銅などの物質の水溶液をつけ、炎の中に入れると、炎の色がそれぞれ赤、赤紫、青色などに変化しました。物質によって色が決まっているため、花火に利用されていることもわかりました。

★アンモニアで噴水をつくろう
 アンモニアが入ったフラスコに水を加えて気圧を低くすると、水が吸い込まれて噴水のようになるという実験を行いました。

  

 空っぽのフラスコに、スポイトで水を少し加えると、ビーカー内の水が勢いよく噴き上がりました。しかも無色透明だった水が赤紫色に。それは、水に加えられていたフェノールフタレイン溶液が、アンモニアのアルカリ性に反応したからです。

★水のふしぎ 
 「浮力」「水圧と表面張力」などについて、水を使って実験しました。「アルキメデスの原理」は、イラストを使って説明した後に実験開始。「水槽からあふれ出した水の体積=浮力」を実証しました。

  

 水に模型の船を浮かべたり、塩を加えてオレンジを浮かせたりしました。「この浮力の実験、中学校の理科の教科書に載ってるよ!」 先輩から教科書を見せてもらい、興味津々。楽しいレクチャーを受け、水の力をばっちり理解できたようでした。


<第2理科室>
★電気と色の不思議 ~電磁誘導とヨウ素、BTBの反応他~
 電流を流して音楽を奏でたり、機械の魚を泳がせる実験や、BTB溶液とヨウ素液を使って色の変化を観察したりしました。薬品のにおいの嗅ぎ方など、薬品の扱い方についても説明しました。

  

 豊富な理科の知識に絶妙なトーク。すでに科学者の貫禄が漂うメンバーたちの、賑やかで楽しいサイエンスショーでした。小学生たちは夢中で見入っていました。

★It's show time! 二酸化炭素
 重曹(炭酸水素ナトリウム)を熱すると、炭酸ナトリウム(炭酸ソーダ)・水蒸気・二酸化炭素(炭酸ガス)に分解します。炭酸ガスが生地をふくらませるという性質を利用して、カルメ焼き、電気パン、ソーダ水を作り、試食しました。

  

 甘い香りが漂うなか、熱心にメモしたり、身を乗り出して観察していた小学生たち。試食タイムでは、実験の産物をおいしそうに味わっていました。


 講座終了後に、附属中学校の小南校長先生が、この講座を企画・実施してくれた中学生たちを労うとともに、「『知っていること』と『教えること』は違う」と、その大切さについて話されました。小学生に中学校で習う理科の内容をわかりやすく説明するのは難しく、それ故にとてもよい勉強になったのではないでしょうか。

              
◇ ◇ ◇

 引き続き、「平成26年度ダヴィンチキッズ成果発表会」が行われました。今回は、「ぶどうの糖度変化」「身近な金属に温度差を与えて発電しよう」「紙の強度調べ」が発表されました。
 キッズたちはパワーポイントで作成した発表資料を示しながら、得られた成果だけでなく、失敗した原因と反省点、今後の計画なども、しっかりとした口調で述べていました。
 大学や中学校の先生から「統計学を利用すると糖度の数値が取れやすい」「自然の温度差を利用して発電する条件を考えてみよう」「紙の筒を円ではなく三角や蜂の巣構造にしてみては?」といった専門的なアドバイスが寄せられました。
 また、聴講した小中学生からも「実験にどれくらい時間をかけたか?」「凍らせたぶどうの糖度をどうやって測ったか?」「実験の条件を同じにしたほうがよい」などといった質問やアドバイスが多数寄せられました。双方にとっても貴重な経験になったと思います。
 キッズのみなさん、お疲れ様でした。これからも研究を続けて、より素晴らしい成果を出してくださいね。

  
2014年12月18日 【基本概念習得プログラム】

基本概念習得プログラム④「バルーンアートで学ぶ正多面体の幾何学」が開催されました

 12月13日(土)に、静岡大学工学部浜松キャンパス工学部5号館11教室で、静岡大学教育学部附属浜松中学校と合同で、基本概念習得プログラム④「バルーンアートで学ぶ正多面体の幾何学」が開催されました。
 今回は、多角形・多面体について理解した後に、実際にバルーンアートで正多面体を製作することで、立体や空間の認識力を養うとともに、多角形や多面体の性質について体得することを目指しました。
 

 前半の「幾何学編」の講師は、静岡大学工学部(物理)の藤間先生。まず、多角形を学ぶ上で、一番小さい(一番辺の少ない)3角形の基本の説明から始まりました。
 3角形とは「同一線上にない3点A,B,Cを結んでできる図形」「2つの三角形は、空間内で一方を移動させて他方に重ねることができるとき合同である」「3角形の内角の和は180°」。これらのことから、凸体、凸多角形、そして正n角形へと発展させていきました。

図1 3角形の内角の和=180°

図2 正多角形の例(正3角形、正4角形、正5角形、正6角形)

 次に、多面体・凸多面体・正多面体について。多面体とは「空間内でいくつかの面(多角形)で囲まれた図形」で「面、頂点、辺」で構成されているもののこと。凸体のものを「凸多面体」と呼びます。
 「正多面体」とは、すべての面が合同な正多角形であり、すべての頂点でそこに集まっている面の数が等しい凸多面体のこと。頂点には、3枚以上の面が集まっています。
 ここで、藤間先生から質問です。「正多面体は5種類しかありませんが、なぜでしょう?」。5種類とは、正4面体、正6面体、正8面体、正12面体、正20面体(図3)。正多面体を形成するには、一つの頂点に3以上の面が必要です。なおかつ360°を超えると平らになってしまうので、面の数が6未満の、正4面体から正20面体までの5種類になるわけです。

図3 正多面体

 続いて、「どんな多面体でも必ず2になる」という「オイラー数」について学びました。多面体Kの面の数をf(face)、頂点の数をv(vertex)、辺の数をe(edge)とすると、「X(K)=f+v-e」となります。これを、多面体Kのオイラー数と呼びます。凸多面体の場合も、3次元の多面体を潰して2次元の平面にし、3角形の組み合わせで表すと、「凸多面体のオイラー数=2」を証明することができました。

   かなり難しい内容ではありましたが、藤間    先生がバルーンで作った正多面体を用いたり、    図を描いて示したりして、やさしく説明された    ため、参加者たちにはわかりやすかったようで    す。
 

 第2部は、実際にバルーンアートで正多面体を製作しました。まず、バルーンアーティストの松下千絵子さんからバルーンアートの基本を習い、正4面体にチャレンジしました。1本のバルーンに3辺ができるように関節(バブル)を作ってZ形にし、2本を組み合わせていきます。
 参加者たちは、恐る恐るバルーンをねじっていき、教室内にはギュッギュッという音やパンッと割れる音が鳴り響いていました。正4面体を作り終える頃にはバルーンの扱いにも慣れ、意欲的に正6面体、正8面体を作っていきました。仲間と協力して正12面体に挑戦したり、一人で黙々と正20面体に取り組む姿も見られました。

 

  

 細長いバルーンで立体を美しく組み立てるには、幾何学的な設計センスと手先の器用さが必要になります。今回は、バルーンアートを楽しみつつ、頭のトレーニングをすることができました。

  
2014年10月24日 【基本概念習得プログラム】

基本概念習得プログラム③「DNA実験 ~お米を鑑定しよう~」が開催されました

 9月23日(火・祝)に、静岡大学工学部浜松キャンパス工学部8号館の生物実験室で、静岡大学教育学部附属浜松中学校と合同で、基本概念習得プログラム③「DNA実験 ~お米を鑑定しよう~」が開催されました。
 今回の実験では、2種類のお米からDNAを抽出し、PCR法によって増幅させ、電気泳動法による解析を行います。その結果から、2つの試料のうちどちらがコシヒカリであるかを判定するものです。講師は静岡大学の大橋先生(技術部教育支援部門バイオグループ)で、化学バイオ工学専攻の木村先生にもご協力いただきました。

 まず最初に、大橋先生からマイクロピペットの使い方を教わりました。1ml(マイクロリットル)以下の液体を測り取ることができるスポイトで、今回のように微量な液体を扱う実験には欠かせません。カチカチッと何度も使い方を練習し、実験開始!

      
      大橋先生による説明       マイクロピペットとマイクロチューブ 

 まず、試料となるコメ1粒を粉砕し、マイクロチューブに入れ、抽出液を加えて、ボルテックスミキサーで攪拌。60℃で15分間加温し、抽出液を加え、ボルテックスミキサーで攪拌した後、遠心分離機にかける…という作業を繰り返しました。これがDNA溶液となります。

      
   抽出液を加える作業中   ボルテックスミキサー   遠心分離機

 このDNA溶液に、PCR用の混合液(PCR PreMix)を加え、PCR装置にセット。95~60℃の温度で約2時間かけて反応を繰り返し、DNAを増幅させました。
 PCR法とは「ポメラーゼ連鎖反応法」といい、わずかな時間でDNA断片の数を数百万倍に増幅させる技術のこと。犯罪捜査に使われるのも、この方法だそうです。
  

 
    PCR装置

 PCR終了後、電気泳動装置にかけ、100Vで電気泳動させました。ゲルの中を、青い色素で色をつけたサンプルが移動していきます。泳動が終わったら、ゲルをLEDイルミネータにセットし、バンドパターン(DNA断片の大きさ)を観察しました。コメの場合、品種によってバンドパターンが異なります。そのため、サンプルのバンドパターンを比較することで、コシヒカリを判別できるのです。
 きれいにバンドパターンが出たものも、そうでないものもありましたが、参加者たちは難しい実験をやり遂げたことを喜び、興味津々で観察したり、撮影したりしていました。

    
     ゲルの中にサンプルを注入      バンドパターン

 今回は「ml」単位の非常に細かい実験となり、最初はマイクロピペットをぎこちない手つきで使っていた参加者たち。次第に上手に使いこなし、科学者の表情で真剣に取り組んでいました。今回の実験で、DNAの構造と複製という、かなり高度な科学の知識の一つを身につけられたことと思います。

     

 この日、浜松ダヴィンチキッズプロジェクトのキッズによる中間発表会も行われました。パワーポイントで作成した資料を使い、自分の研究を熱心に発表するキッズたち。それに対し、附属中学校の生徒から積極的に質問が寄せられ、回答していくうちに、今後の方向性が見えてきたキッズもいました。先生方のアドバイスも加わり、中身の濃い中間発表会となりました。
2014年07月31日 【基本概念習得プログラム】

基本概念習得プログラム②「超伝導とは-酸化物超伝導体を知る-」が開催されました

 7月27日(日)に、静岡大学工学部浜松キャンパス工学部8号館の物理実験室で、静岡大学教育学部附属浜松中学校と合同で、基本概念習得プログラム②「超伝導とは-酸化物超伝導体を知る-」が開催されました。
 講師は静岡大学工学部の藤間先生(物理)で「マイスナー効果」の実験と「電気抵抗の測定」などを行いました。

 

 超伝導体とは、電気抵抗が0になったり、超伝導体内部から磁力線を排除するなどの性質を持つ物体のこと。たいていの金属は超伝導体になりますが、今回の実験では、液体窒素中で超伝導現象が比較的簡単に観察できる「酸化物超伝導体」を用いました。
 まずは、「マイスナー効果」の実験から。スチロール容器の上に超伝導体を載せ、そこへ静かに液体窒素を注ぎ入れました。超伝導体が十分冷えたら、ネオジム磁石をそっと載せると、ネオジム磁石が浮かび上がりました(マイスナー効果)。磁石から出る磁力線が超伝導体に排除されると、磁気的な反発力が生じ、重力と釣り合って空中に静止するためです。
 不思議な現象を目の当たりした参加者たちは、興味津々の様子で見入っていました。

      
    冷え冷えの液体窒素(-196℃)       浮かぶ磁石  

 次に、液体窒素の中に超伝導体を浸して電気抵抗の温度変化を測定し、転移温度以下では、超伝導の電気抵抗が0になることを確かめました。 
 電気抵抗は、超伝導体に電流を流して測定し、「抵抗値(R)=電圧(V)÷電流(I)」から求めました(オームの法則)。また、温度は熱伝対を用いて、氷(0℃)と超伝導体の温度の差によって生じる電圧から求めました。
 回路の組立、データの読み取り、グラフ作成…と、どれも難しい作業でしたが、参加者たちは協力し合って熱心に取り組んでいました。その結果、電気抵抗が0になる温度を確認することができました。

    
   回路組立、奮闘していました            測定中

 最後に、風船を使って実験を行いました。液体窒素の入った容器に風船を漬けると、風船内の体積が小さくなり、しぼんでいきました。取り出すと、しわしわに縮んだ風船が、元通りの大きさに。参加者たちは、変化の様子を何度も楽しんでいました。

     
   どんどんしぼんでいきます            元通りに! 

 今回の実験と測定は、主に大学1・2年向けのもので、かなり難しかったと思いますが、参加者のみなさんは意欲的に取り組んでいました。次回もがんばってください!
 次回は、9月下旬~10月に「おコメのDNA鑑定」を予定しています。ご期待ください。
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